羽根川牧人 / ゆうなぎ「八雲京語り 宮廷に鈴の音ひびく」1巻

 長年争いの続く西の武家と東の公家は互いの疲弊により一時休戦の約定を結ぶことに。その政略結婚に選ばれたのは武家からは「鬼姫」雲雀、公家からはまだ十二の少年鈴鳴だった。たった一年限りの夫婦となった二人は、周りに流されるばかりの自分たちの存在を確固たるものにするべく動き出す──、という和風ファンタジー。羽根川牧人の同名原作小説をゆうなぎがコミカライズ。

 ざっくりいうと二十二の雲雀が十二の鈴鳴に発破をかけて少年を男に育てる逆光源氏もの、もしくは平安おねショタ(ざっくりすぎる)。かといって雲雀から鈴鳴への一方的なものかというとそんなこともなく、互いに認め、時には言い合い、それぞれの戦いの場へ向けて準備する、というのがきっちり描かれているため、年の差カップルの架空歴史ドラマとしても十分面白い。おそらく時代設定、舞台設定、各家の設定などきちんと作ってあると思われるものの、その辺りは軽く流して二人の物語に絞っているのはキャラクター小説として正解かと。そのメインの二人を始め、それぞれのライバルとなる暮明、鎬雨夫妻、陰陽師で歌人の雅親などなどキャラの立った脇役を表情豊かに魅力的に描いてくるコミカライズ担当のゆうなぎさんの筆力には素晴らしいものがあるかと。老若男女に着物、建築物まで描けてるから過去作がそこそこあるかと思って調べたら読み切りのみで本当に新人っぽい。今後の展開と活躍に期待していよう。