魔女見習いをさがして

「おジャ魔女どれみ」の放送当時はアニメから完全に離れていた頃で実際に見ることはなかったものの、有線かなにかでかかっていたOP曲の「おジャ魔女カーニバル!!」のインパクトにやられてCDをレンタルして聴いたのは覚えてる。機会があれば見てみたいとは思っていたものの、4年分+OVA+劇場版となるとなかなか難しく、手が出せないでいる内に今作が初どれみになることに。

 日曜日の朝から4年に渡って放送されていた「おジャ魔女どれみ」シリーズ。その「おジャ魔女どれみ」を幼い頃に見て育った大学生のソラ、商社勤務のミレ、フリーターのレイカの三人はそれぞれの立場でそれぞれの悩みに迷った末、足を向けたMAHO堂のモデルになったという鎌倉の洋館で偶然出会う。これを運命の出会いと感じた三人は意気投合し、「おジャ魔女どれみ」のゆかりの地である飛騨高山、京都、奈良に旅にでることに──。

「おジャ魔女どれみ」20周年記念作品と銘打った本作はあくまで「おジャ魔女どれみ」を見て育った三人の女性のドラマであって、「おジャ魔女どれみ」の新作アニメではないことに注意。この辺りの配分がどの程度か判断がつかなくて迷っていたけれど、「どれみを知らなくても問題なし」「知っていればなお面白い」という評価から映画館へ。どれみ未視聴の自分としてはどれみの概要をざっくり知っていて、馬越嘉彦さんキャラクターデザインが好きだという程度でも楽しむには十分かと。主演三人の全員が非声優である点についても個人的には問題なし。主演だけでなく脇役にも俳優を充ててるだけに実写ドラマをアニメでやってるような感覚はあるので、この辺の好みは人によって分かれそう。

 ストーリーは三人の出会いと旅先での行動を切っ掛けに、それぞれが直面している問題が劇的にではないものの解決に向かうという流れで、時にはドラマチックに、時にはコミカルに三人の旅とドラマが展開されていく。ちょっとしたことからのケンカと仲直り、旅の先で新たな出会いとほのかな恋心、地元の名所巡りと食事と酒とまあ半分くらいは普通に観光ドラマをやってる感はあるものの、原作アニメを嗜んでいたら要所要所で「ここはあの場所!」という楽しみができたのかも。さらには慕ってくる部下、幼少期に離れたきりの父親、金をたかるダメ男、一人旅の陽気大学生と三人それぞれに男性関係を取り入れてくるところは視聴対象を意識したトレンディドラマっぽい。それでも恋愛要素はメインでなく、あくまで三人の次のステップへの切っ掛けの一つの扱いなので、三人のドラマのぶれはない。

 抱えている問題や悩み、迷いをぱぱっと解決してくれるような奇跡も魔法もないけれど、新たな出会いとここから一歩を踏み出す勇気を与えくれたのは「おジャ魔女どれみ」だった、というおジャ魔女世代に贈る「あなたの中にどれみたちはまだいますか?」というメッセージある良作になっているかと。