冬のはいふり以来となった久しぶりの映画鑑賞はヴァイオレット・エヴァーガーデン。実質の完結編でもあり、多数のスタッフの遺作ともなった今作は「開始5分で泣く」と感想で流れてきて、泣きの作品だということは分かっているけど、5分とは一体何事だと見たら本当に冒頭だけで涙目にされたという。そこからの「タオル必須」「替えのマスクも持っていけ」といった感想も事実だったというのがまた。そんな感想は大量に流れてきても、ネタバレに関してはが全く流れてこなかったのにはファンの民度の高さが伺える。
物語はデイジーが亡くなった祖母アンの実家に両親と訪れるところから始まる。祖母の遺品の中に祖母への手紙を見つけるデイジー、その手紙は祖母が幼少の時に亡くした祖母の母からの手紙で、自分の死後もアンの誕生日に手紙が送り届けられるようにされていたという。その手紙を代筆したたのは当時有名だった自動手記人形のヴァイオレット・エヴァーガーデン。彼女がどのような人物だったのかを知るために、デイジーは彼女の足跡を辿り始める──。
そりゃ冒頭から本編10話を持ってくるとか泣くでしょ。泣いたわ。10話をただ簡単に引っ張ってきただけでなく、物語の語り部としてアンの孫を採用するのがまず上手いし、それに伴い時代設定を数十年後にしてヴァイオレットを過去の存在にした構成もまた上手すぎる。これにより、これまでの本編、外伝のように彼女と彼女と関わった人たちのこれからの未来ある物語でなく、もう終わってしまった彼女の過去の物語をデイジーと共に知るというオープニングに引き込まれる。
物語そのものは死んだと思われていたギルベルトは名前を変えて遠方で生きていて、ヴァイオレットとホッジンズが会いに行くけれど、というこれまで同様の手紙を題材にしたヒューマンドラマに加えて、ここまで引っ張ってきた二人のストレートなラブストーリーが展開される。ストレートなだけに本編外伝を積み重ねた上での二人の再会には否応なく心が動かされるし、それを形作る演技と作画と劇伴と演出のそれぞれが最高の品質でただただ素晴らしい。そこからのデイジーの旅の終わり、エンディングへの流れでヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語がここで終わったことを感じさせるという、最初から最後までずっと心動かされる傑作になっているかと。
「鬼滅の刃」の超ヒットの影に隠れてしまった感はあるけれど、10月26日で111万人動員、興行収入15億超、さらには11月13日より日本アニメとしては初のドルビーシネマでの公開が決定とのことで、地道にロングランになりそうな気配。